どんな表現者になりたいですか?
これは「プロのベリーダンサーになるなら…」という意味ではありません。
生きていれば誰だって「自分の人生の表現者」です。
ダンスセラピーでは「ダンスはコミュニケーション」という考え方がありますが、有益なコミュニケーションのためにはまず自分を「わたしはこういう人間です」と表現しなければなりません。
自己表現の根底にあるもの
「なにが好きで何が嫌なのか?」「どんな価値観を持っているのか?」「何を見てどう感じ、どう考えるのか?」「大切にしているものは何で、それはなぜ?」
こういったことに答えられない人はけっこう多いのですが、それは控えめな性格(日本人の気質的?)の問題というよりも、実際は「自分でもよくわからない」という自己理解の未熟さの問題であることが多いように感じます。
自己理解が未熟な人
周りに合わせて「嫌われないため」「傷つかないため」のネガティブな協調性ばかり学んでいると、当たり障りないコミュニケーションはできる、けど、受け身なだけの「自分がない(自分のことがよくわからない)」人間ができあがります。
傷つかないでいい、みんなと一緒だから楽で安心、といったメリットはありますが、量産型の「ただの、いい人」になりやすく、このタイプのいい人は自ら進んで「可もなく不可もなく」の人間になっているので深いところで繋がるような人間関係が築きにくいのです。
(めちゃくちゃ嫌われないけどめちゃくちゃ好かれもしない、というイメージ)
また「自分がない人」だけでなく、「自分を持っていても伝えない人」も結果的には同じで、他者とのコミュニケーションにおいて「表現しないことはナイことと同じ」です。
自分がある人の言葉には説得力がある
一方で、周りの人がどうこうではなく「私はどう感じてどう考える?」「私はどうしたい?」「私はどうありたい?」と自問自答を繰り返し行動してきた人は、自己理解が育っています。
前者と対比させていえば「可もあり、不可もある」タイプの人間です。万人受けはしないかもしれませんが、素直に自己表現できる人間はクセはあっても魅力的です。
こういった「自分がある(自己理解が深く、それを体現して生きている)」人の言葉は、それが他愛のないことであってもどこか深く、印象に残ります。
きっと多くの人にとって「話していて楽しい!」と感じるのはこういう人ですよね。
(ちなみに、自己理解を突き詰めた先に他者理解があるといわれます。「自分の言いたいことだけ言っていい」「周りを気にせずやりたいことだけすればいい」というただの自分勝手な人とは違いますよ!)
言葉もダンスも自己表現
「言葉」が表現方法の一つであることを考えれば、これは「ダンス」にも同じことが言えそうです。
以前、ベリーダンスのショーをあまり見たことがない(でも審美眼のある)方が、様々なプロダンサーが踊るショーを観にいったときに、途中からつまらなそうにこう言っていました。
「すごく上手だとは思うけど、みんな一緒に見えてしまって飽きてきた…」
たぶんこれが第三者からみたときの本音なのでしょう。
ベリーダンス界にどっぷりつかっている人にとっては、こまかなテクニックや表現やノリ方などの違いがわかるので「おぉ…あのダンサーすごい!素敵!」となるんだけども…
文化・芸術の分野ってまぁみんなそうですね。
量産型のいい人は、努力して量産型の「正解ダンス」を目指そうとしてしまいます。
もちろん観る側がよく見ればひとりひとりの個性の違いはわかるんだけど、そもそも「もっと知りたい」と思えるほどに興味を惹かれなかったら?
たとえテクニックが完璧でも、その人自身が「自分が何者かわからない、何を表現したいかわからない」のであれば、それは「上手」だけど「つまらない」表現者になってしまうかもしれません。
自己理解が深い人は、「自分をどう魅せたいか」がクリアになっており、「どうすれば自分が魅力的に見えるのか」がわかっていて、それに従い「自分らしいダンス」を目指します。
(前者と後者はからなずしも一致せず、わかっていても葛藤することが多いものですが)
テクニックが凡庸でも、「自分はこうありたい」の輪郭がはっきり表現されている人のダンスはなんか目が離せなかったりします。
テクニック以前に「表現者自身の在り方」ありき、だからダンスには人間性が現れるのだと思います。
どんな表現者(=人間)になりたいかを体現していく
自己理解が未熟だと(コミュニケーションにしろダンスにしろ)本質的な自己表現ができません。
自分がある人の表現することは、言葉でもダンスでも(ある一定の人にとっては)魅力的に映ります。
「類は友を呼ぶ」ということわざがありますが、自分がある人は自分がある人とひかれあいます。その方が一緒にいて楽だし刺激的で楽しいから。
だからもしあなたが「未熟でも魅力的な表現者」になりたいと思ったら、否定される覚悟と勇気をもって自己表現をしていくことが大切なのです。
そして「わたしはこんな人間です」を言葉やダンスを通じてちゃんと表現していれば、合わない人は自然と離れていきますし、今度はそんなあなたに見合う人が集まってきます。
いびつな人間関係の中で自己表現する力が育たないままいると、どこかにひずみが生まれていきます。
それが「生きづらさ」であったり、「自己肯定感の低さ」を助長する原因となり、自分らしさが何かもわからないのに「自分らしく生きられない」と嘆く人が増えている昨今。
これからの時代はもっとシンプル&ナチュラルに、肩の力を抜いて生きていきませんか?
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